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財団法人日本ナショナルトラストからのメッセージ
愛知県における「産業文化財」の保存について
須田寛
名古屋を中心とする中部圏は古来「物づくりの地方」といわれてきました。とくに愛知県は府県別工業生産額第一位の座をずっと保持し続けています。
古くは陶磁器、織物にはじまり、航空機、自動車、工作機械、最近ではセラミックなどの新素材産業や航空宇宙産業にまでそのレパートリーをひろげつつあります。このような物づくりの中枢にある当地には永い産業発展の歴史を物語るいわゆる産業遺産(あえて「産業文化財」とよびたい)が各地に多く残されました。工場の遺構、機械器具類、自動車等々快挙にいとまがありません。幸いたびたびの災害にも不拘当地の人々にはこれら産業文化財を大切に保存し続け現在各地にその集積がみられます。そして県市など公共団体や企業がこれらをまとめて資料館、博物館に展示公開するケースが最近増えてきました。愛知県立の「陶磁資料館」(瀬戸市)トヨタ系企業の「産業技術記念館」(名古屋市)「自動車博物館」(長久手町)などその収蔵品の価値が国際的に高く評価されているものもあります。これら数多くの資料館等の存在をひろく周知させると共により多くの人々に見てもらいたいものとこのほど名古屋商工会議所が紹介資科「産業技術文化圏あいち」を作ると共にPRに乗出しました。
一方愛知県には優れた観光地はあるもののそれらの横のつながりが弱くとくに修学旅行生がほとんど訪れない県になっています。前記の産業文化財を見る旅に多くの人をお誘いすると共に次代の日本を背負う青少年諸君の修学旅行の目的地にこれら産業文化財の見学をとり込んでもらうことを考えました。
そして「産業観光」という新しい旅を提案して曲がり角にあるといわれる国内観光の活性化にも寄与したいと思い目下キャンペーンをはじめたところです。
愛知の「産業文化財を訪ねる旅」を通じて日本産業や観光の将来を皆で今一度見つめなおしてみたいものと思います。
<東海旅客鉄道(株)会長・当財団評議委員>

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産業技術記念館の外観

 

 

 

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